EPISODE · 2025

20分で変わった、10年と17年
——脳幹セラピーの現場から

内田拓也 著 · 読了時間:約7分

施術の現場で、私は何度も「説明のつかない変化」に立ち会ってきた。医療的な観点から見れば「なぜそうなるのか」と首をかしげるような出来事が、脳幹セラピーの実践の中では繰り返し起きる。

私はそれを「奇跡」とは呼ばない。身体が本来の状態に戻ろうとする力——自然治癒力——が、脳幹を通じて発揮されたときに起きることだと理解している。今回は、そのような体験の中から、特に印象に残っている2つのエピソードを記しておきたい。

いずれも、脳幹セラピーが「治す」のではなく、「身体が自ら動き出すための場を整える」という実践であることを、私自身に改めて教えてくれた出来事だ。

「毎日ティッシュの箱を使い切るくらい、鼻水が止まらなかった。」

エピソード1:10年間の鼻水が、翌日から止まった

ある女性が施術を受けに来た。彼女の悩みは、10年以上続く慢性的な鼻水だった。毎日ティッシュの箱を使い切るほどで、アレルギー検査や耳鼻科への通院、様々なサプリメントや民間療法を試してきたが、改善しなかったという。

施術は20分ほどだった。脳幹へのアプローチを中心に、身体の状態を整えていく。施術中、彼女は「何か変わった感じがする」と言っていたが、目に見える変化はなかった。

翌日、彼女から連絡が来た。「施術を受けたその夜、大量の鼻水が出た。でも翌朝から、一切出なくなった」という内容だった。

「その夜、大量に出て——翌朝から、一切出なくなりました。」

私がしたことは、「鼻水を止める」ことではない。脳幹を通じて、身体が本来の調整機能を取り戻せるよう、場を整えただけだ。その夜の「大量の鼻水」は、身体が長年滞らせていたものを一気に排出しようとした反応だったのかもしれない。

なぜそうなったのか、医学的に完全に説明することは私にはできない。ただ、身体には「自ら整う力」があり、その力が発揮されるための条件が整ったとき、変化は起きる——そのことを、この体験は改めて示してくれた。

脳幹セラピーの考え方

脳幹は、自律神経・免疫・ホルモンバランスなど、身体の自動調整機能を統括する中枢だ。慢性的な症状の多くは、この調整機能が何らかの理由でうまく働いていない状態と見ることができる。脳幹へのアプローチは、その調整機能が本来の働きを取り戻せるよう「場を整える」ことを目的としている。

※本記事の内容は医療行為の代替を意図するものではありません。症状がある場合は医療機関へご相談ください。

「17年間、何をやっても取れなかった痛みが——なくなっていた。」

エピソード2:アメリカの出張先で、17年間の痛みが消えた

アメリカへの出張中のことだった。現地で知り合ったある男性が、「首の付け根に17年間、慢性的な痛みがある」と話してくれた。整形外科・カイロプラクティック・鍼灸・マッサージ——あらゆる手段を試してきたが、一時的に楽になることはあっても、根本的には変わらなかったという。

出張先という環境だったが、20分ほど時間をとって脳幹セラピーを行った。施術を終えた直後、彼はしばらく静かに座っていた。そして、ゆっくりと首を動かしながら言った。

「痛みがない。——なぜか、涙が止まらない。」

痛みが消えただけではなかった。彼は「意味もなく、至福の境地にいる感じがする」と言い、涙を流し続けた。痛みに関係する感情的な記憶や緊張が、身体の深いところで解放されたのかもしれない。

17年間、その痛みとともに生きてきた。それがある日、20分の施術の後に消えた。その体験が彼の身体と心にどれほどの衝撃をもたらしたか——涙は、その表れだったのだと思う。

私は彼に何かを「与えた」わけではない。ただ、脳幹を通じて、身体が長年抱えてきた緊張を手放せるような場を整えた。その先に何が起きるかは、身体が決める。

「治す」のではなく、「戻る場を整える」

この2つのエピソードに共通しているのは、私が「症状を治した」のではないということだ。鼻水を止めようとしたわけでも、首の痛みを取り除こうとしたわけでもない。

脳幹セラピーの実践は、「身体が本来の状態に戻ろうとする力が働きやすい場を整える」ことだ。その力が発揮されたとき、何が起きるかは身体が決める。施術者にできるのは、その力が働くための条件を整えることだけだ。

だからこそ、脳幹セラピーは「依存を生まない」。施術者が何かを「してあげる」のではなく、クライアント自身の身体が動き出す——その体験を積み重ねることで、人は自分の身体への信頼を取り戻していく。

この記事で伝えたいこと

長年の不調が「なぜ変わったのか」を完全に説明することは、私にはできない。ただ、身体には「自ら整う力」があり、脳幹はその中枢にある——そのことを、現場での体験は繰り返し教えてくれる。脳幹セラピーは、その力を信頼することから始まる実践だ。

※本記事の内容は医療行為の代替を意図するものではありません。個人の体験には個人差があります。

AUTHOR

内田 拓也

内田 拓也

理学療法士 / 脳幹セラピー創始者

脳幹セラピー協会 代表。理学療法士として急性期医療に従事後、整体・東洋医学・伝統医学を経て脳幹セラピーを体系化。「依存を生まない設計」を理念に、国内外でセラピスト育成に取り組む。

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